男は女の手から携帯電話を奪うようにとって、 画面に被さる明らかに携帯電話の2〜3倍くらいの重さになってそうなストラップをよけて画面を見た。 そして、無言のまま僕らに女の携帯電話を渡した。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ [夏のぬけがら] いつだってここにいたいから いつだって何処にも行かないよ 君を待っているから 僕は待っているから それだけは暑さのせいじゃないんだよ 君を待っているから 僕は待っているから ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 受信時間は男よりもあとだ。 ということはキノシタ→男、女の順番だ。 そして、女も男同様にメールの前に電話があったと言っている。 「良い歌詞が出来たからメールで3つに分けて送ってて最後の1つを私に送るって言ってたよ」 女は僕らほど心配している様子は見受けられない。 「他に何か変わったことはなかったのか?」 男はカウンターから身を乗り出して女に尋ねる。 「海に来てるって言ってたよ、どこに泊まってるって言ってたっけなぁ? あとは何だろう・・・・・元気がなかったなぁ」 女からの有力な情報はそれだけだった。 男に借りていたと思われる映画のDVDを返してカクテルを1杯飲んで帰って行った。 女は僕らに帰り際こういって帰った、 「そんなに心配しなくても大丈夫よ、すぐに帰ってくるから」 再び店内は僕・キノシタ・男の3人に戻った。 男は女の言葉で安心した様子もなく暗い顔をして食器を洗っているし、 僕らも再び黙って生ビールを飲み始めた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ [夏のぬけがら] 焼けた砂浜を1人歩いてる 焼けた砂浜が何度も尋ねてる 燃えているのは太陽なのかな? 終わらない夏はどこにあるのか? 波はここまでは届かない 君はどこにいるのかワカラナイ 僕はどこにいるのかワカラナイ 景色は後ろに流れているのかな? 僕だけ前に流されているのかな? 暑さのせいで眠れない いつだってここにいたいから いつだって何処にも行かないよ 君を待っているから 僕は待っているから それだけは暑さのせいじゃないんだよ 君を待っているから 僕は待っているから ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 誰かが迎えに来るのを待っているのかな? それとも待っていたのかな? |