カパスの町はいつも正午になると町の中心部の教会の鐘が3分間なるのだが、 毎年、卒業パーティーの日にはその教会の鐘の後に5発の花火が上がる。 学生達はもちろん、町中の人が卒業する学生を祝ってくれる幸せな1日。 僕はキャシーの家へと続く長い坂道を急いで登っている。 片手には花火と同時に焼き上がったホットケーキ。 キャシーが食べる頃には冷めちゃうけども、 そればかりはどうしょうもない。 そこまでは考えていたんだけども、 ホットケーキを入れるバスケットを用意するのを忘れていたんだ。 丁度良いサイズのがなくって妹から借りたりしていたら、 今度はスーツに着替えるのを忘れていたことに気付いた。 さすがにTシャツで卒業パーティーに行くわけにはいかない。 というかその前に、キャシーが一緒に行ってくれない。 そんなこんなで僕は急いでキャシーの家へ向かっている・・・・・・ ようやくキャシーの家に着きドアをノックする。 「キャシー、遅くなってごめん」 「遅いよヘンゼル、おいてかれたのかと思ったわ」 キャシーが出てきた。 赤いワンピースを着ていて、ほんとにかわいい。 「さぁ行きましょう、ヘンゼル」 「う、うん。ごめんねキャシー」 早足で歩きながら僕はキャシーに切り出した。 「遅刻して頼みづらいんだけど・・・・・いいかな?」 キャシーは笑って言った、 「いいかな?だけじゃわかんないよ」 「そうだよね、ごめん。パーティーに行く前にあの公園に寄らないかい?」 「そうね、私も話したいことがあるし。ヘンゼルも話があるんでしょう?」 「なんでもお見通しなんだね」 「もちろんよ。私はヘンゼルのガールフレンドよ」 公園に着いた頃には夕方になっていて、 あの日と同じオレンジ色の光がキャシーを包む。 学校の方角からはビックバンドがスウィングを奏でている音が風に乗って聞こえてくる。 「あの曲は『ミスター・ムーンライト』ね」 「うん。キャシーと初めて会った時のダンスパーティーを思い出すよ」 2人はベンチに座った。 |