Gum

2章「グリーンガム」

2節「疲労困憊」


私は極度に疲労している。

私は新入生・鈴木舞の隣の席に座って本当に中身のない他愛もない会話を続けている。

「職場の雰囲気はどうだい?」
「困ったことはないかい?」

早くこの歓迎会が終わってくれないだろうか。
部屋に掛けてある時計を見るとまだ1時間半はある、30分くらいしか経っていないのだ。

時間は正確だ。
だが、正確なものほど不正確だという学者の話をぼんやりと思い出した。

私は苛立ちを抑えるようにガムをしきりに噛んでいる。
顎が疲れるくらいに強く何枚も噛んでいる。

「吉野さんはほんとにガムが好きなんですね」

人の気も知らないで鈴木舞が私に言った。

「そう、そうだね・・・・・私は煙草も吸わないしね」

私は力なくそう言って笑った、何も可笑しくなんかないのに。

「何味が好きなんですか?」

鈴木舞が私に聞く。

「特にこれといって決まったものを買っているわけではないけど、ミント味をよく買うかなぁ」

「私はロッテのグリーンガムが好きでいっつも鞄に入ってるんですよ」

私は「へぇ〜」とだけ言いコップのビールを空けた。
ガムの味と混ざって全然美味しくない。

私は鈴木舞と他愛のない話を続けた。