私は瓶ビールをちびりちびりと飲んでいる。 この店は生ビールを置いていない。 いつも特に何とも思わないが今日に限ってはその点が非常に不快である。 それは生ビールの方が美味しいとかいうレベルの次元ではなく、 瓶ビールだと「お酌」したりされたりというのが面倒だからだ。 自分のペースで飲むことができないし、 周りに気を配らなくてはいけないので私は「お酌」という日本らしい風習が好きではない。 「どうぞ」 早速、隣の新入生・鈴木舞が私のグラスに瓶ビールを注ぎだした。 「あぁ、ありがとう」 私はしぶしぶグラスを傾けて「お酌」をされる。 <なんだかなぁ> 私は注がれたビールを日本酒を飲むようにゆっくりと飲む。 そのグラスを片手に持ちながら鈴木舞を横目で見る。 何というか派手さのない静かな女性である。 良く言えば大人っぽいとでも言うのだろうか? 彼女のかけている黒縁の眼鏡が悪いのだろうか? 明らかに同じ新入生の宮永里奈の方が若者っぽくて男にはもてそうな感じはする。 だからといって別にどうでもいい話だし、 そんな目で女性を見ているとセクハラ扱いされる昨今だ。 まぁ、なんとなくだけどセクハラ扱いしたくなる方の気持ちもわからないでもないが・・・ 「どうかしたんですか?」 鈴木舞がビール瓶を持ちながら不思議そうに私をのぞき込む。 「いやいや、何でもないよ」 私は慌てて答える。 それでもまだ鈴木舞が私を不思議そうに見つめるので、 私はさらに動揺してしまって、 「いやぁ、あの、久しぶりにお酒を飲んだもので・・・」 と少し酔ったかのようなことを言ってしまった。 「あ、私もそんなにお酒って強くないんですよ」 これでは鈴木舞に気を遣われているようで心苦しい。 本来なら私が気を遣わなくてはならないのに。 「どうだい?こっちの暮らしは馴れたかい?」 自分でも吐き気がするくらい無難な質問だ。 あぁ早く家に帰りたい。 |