Gum

1章「ミント」

3節「自己紹介という名の矛盾」


歓迎会は予定通りの時間に新入生の自己紹介で始まった。

今年入ったのは女性2人、
共に22歳の大卒者だ。

「初めまして、宮永里奈です・・・・・」新入生の自己紹介が始まる。

常々思うのだが、こういう自己紹介とは意味があるのだろうか?
私には何の意味もない事のように思えてならない。

公務員試験に面接も試験もあるのだし、
そこでの成果と履歴書で採用を決めているのだから改めて自己紹介する必要はないと思う。

面接官ではない我々も職場での自己紹介で名前は知っているので、
ここで紹介されなくとも何の不便も感じずに仕事ができる。

自己紹介する者と聞かされる者に疲労をあたえて、
各個人の貴重な時間を削るだけだ。

イライラしてくる。

私は胸ポケットからミント味のガムを取り出して口に入れた。
私はもちろん何の利点のない煙草など吸わない。

イライラしてくると音をたててガムを噛みたくなる衝動に駆られるが、
そこは我慢しなくてはならない。

できるだけ音をたてずにガムを噛む。

そんなことをしている間に一人目の宮永里奈の自己紹介が終わり2人目が始めた。

「初めまして、鈴木舞と申します・・・・・」

私の頭の中は昨日のニュースで報道されていた中東のテロ多発地域についての情報の整理をしていた。

<やれやれだな>