僕とディレクターの神田さんの問答は続いている。 「やっぱり・・・・どうしてもだめですか?」 僕は相変わらず泣きそうだ。 「いやいや、ホンマちゃん、そんなオレを困らせないでよぉ〜。 ぶっちゃけさぁ・・・・いやなんでもないや」 「神田さん!何でも言って下さい」 「あのぉ、あれだよ・・・・今流行の二人組いるじゃん?」 「ん?、誰ですか?」 「あれ、一人は背の高い外人でもう一人はいかにもチャラい感じの奴でさぁ。 それで紅白とか出たりめざましテレビのテーマソングとか歌ってた・・・・」 「デフテックですか?」 「そう!デブチック!!」 「いやいや、デフテックです」 「そのデブチックみたいに・・・・何て言えばいいのかなぁ・・・・ 『ビーサン履いて海に行こうみたいな』軽い感じが最近の流行じゃない? そこにメッセージなんて今は必要としてないのよ」 「まぁ・・・・だいたいはそうだと思います」 「だからホンマちゃんの暗いトラックにのせて世の中への不満や熱いメッセージってのは あんまり最近は流行らないわけなのよ・・・・」 「はぁ・・・・」 「いやいや、もちろんオレは好きだけどねッ」 「はぁ・・・・ありがとうございます・・・・」 「今の曲の最後の『勇気を持て!』ってとこも好きよ! 明日もがんばろうって勇気づけられるよ!」 「すいません、そこは『裕木奈江!勇気萎え!』っていう歌詞です・・・・」 「まぁ、ホンマちゃんもデブチックみたいな軽い感じの曲でイメチェンしてみなよ!」 <なんだかなぁ・・・・> 「考えてみます」 僕はテレビ局を後にした。 そして、テレビ局のトイレで僕は声を殺して泣いた。 |