僕の名前はHOMMAXX(ホンマックス)、もちろんニックネームで本名は本間たけし。 僕はヒップホップというジャンルの音楽をやっていて、 つい何年か前のヒップホップブームのときには結構人気者だったんだ。 メジャーレーベルからの誘いも幾つか来たし、 たくさんラジオ・テレビや雑誌にも出た。 それでもメジャーと契約しなかったのは、 自分のペースで自分のヒップホップを作りたかったからなんだ。 だから僕は今でもコンビニのバイトを続けている。 今、そんな僕は深夜の歌番組「カウントダウン50」の収録を行っている。 *********************************************** HEY,YO 燦々たる時代、簡単斬る世代、感嘆売る偉大、どうにかなっちまってるゼ! 売春、買春、ラッシュで哀愁感じてても 話題、アイドンワナダイ、寝台じゃ追いつかねぇ 裕木奈江!勇気萎え! HEY,YO 狂った世界、潤んだ視界、澱んだ政界、どうにかなっちまってるゼ! 売春、買春、ラッシュで哀愁感じてても 話題、アイドンワナダイ、寝台じゃ追いつかねぇ 裕木奈江!勇気萎え! *********************************************** 「は〜い、カット!オッケーオッケー!!」 僕はあっけにとられてディレクターの神田さんを見た。 神田さんは満足そうに手を叩いている。 オケが神田さんの合図で消された。 「す、すいません・・・・」 「いやぁ〜ホンマちゃん、今日も最高のラップだねぇ〜」 神田さんは今日も素足に革靴で、まるで石田純一をお手本にしているような格好をしている。 「あ、あの、まだ1番しかやってないんですけど・・・・」 そうなのだ、1番しかやっていない。 <これからこの「チェキラッチョ!チェックラッシュ!」という曲は盛り上がるところなのに!> 「いやぁ〜ホンマちゃん、言ってなかったっけ?新譜紹介のとこで流れるヤツだからこれでバッチリよ」 「はぁ〜そうですか・・・・」 そんな話聞いていない気がするが、 どうもこの人に言われるとそうなのかなぁと思ってしまう。 僕はブカブカのランニングにでっかいサングラスをかけて一見強面な印象を持たれることが多いけど、 ほんとは子供の頃から気が弱いってお母さんにも言われるんだ。 小学生の頃にクラスで給食費が無くなったって騒ぎのときも、 勝手にドキドキしちゃって疑われたんだよなぁ。 おっと、今の僕ははHOMMAXXなんだから給食費は関係ないや。 「じゃあ、これから盛り上がるとこなんで、 もうちょっと歌わせて貰ってそこを放送するっていうのはどうですか?」 僕は苦手な神田さんにダメもとで頼んでみることにした。 「いやぁ〜ホンマちゃん、もう十分だよ。ホンマちゃんのソウルはビシビシきちゃってるよ! 実際問題・爆笑問題・どんだけぇ〜って感じ!十分十分、パッチギ・バッチリよ!」 「でも、神田さん・・・・」 僕はなんだか強気に言えない自分が情けなくって泣きそうになってしまった。 |