真夏にプリン

5章「夏休み」

(2)「捜索」


どうにかなるだろうと安易に思っていたが「捜索」は容易ではなかった。

頼み込んでも教えてくれなかったのが2件(僕らが怪しまれたのか?)、
残りの3件には『彼女』は宿泊していなかった。

その足で炎天下の中、近くのホテル・旅館を当たってみたけどみつからなかった。
小説や漫画みたいに上手くはいかない。

僕らは疲れて浜辺に車を停めて沈む太陽を見ている。
片手には今にも溶けそうなアイスクリーム。

「なかなか上手いこといかないね」
キノシタは運転の疲れもあるので僕以上に疲れている様子だ。

「そうだなぁ・・・・・」

『彼女』もここでこんな夕焼けを見たのかな?

「どうしよっか?」キノシタはハンドルを握ったまま僕に尋ねる。

「どっか安そうな旅館でも探して1泊しようか?」
助手席乗っているだけとはいえ、僕も『彼女』の捜索に疲れた。

「そうだね、そうしよう。あんまりお金持ってきてないから安いとこ探そうか」
キノシタはミニクーパーのエンジンをかけた。

ゆっくりと海岸沿いの道を走る。
なんだか世界の果てに来た気分で、今にも僕らは車ごと消えてしまいそうな気がした。

僕は『彼女』がキノシタ・男・女に分けて送った歌詞を繋げたものを見た。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

[夏のぬけがら]

焼けた砂浜を1人歩いてる
焼けた砂浜が何度も尋ねてる

燃えているのは太陽なのかな?
終わらない夏はどこにあるのか?

波はここまでは届かない

君はどこにいるのかワカラナイ
僕はどこにいるのかワカラナイ

景色は後ろに流れているのかな?
僕だけ前に流されているのかな?

暑さのせいで眠れない

いつだってここにいたいから
いつだって何処にも行かないよ

君を待っているから
僕は待っているから

それだけは暑さのせいじゃないんだよ

君を待っているから
僕は待っているから

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

僕らはここにいて君を迎えに来たんだよ。