真夏にプリン

5章「夏休み」

(1)「MINI」


僕はエアコンの付いていない水色のミニクーパーの助手席に乗って200qくらい先の海に行こうとしている。
運転しているのはこの車の持ち主であるキノシタ。

車に関してまったく知識がないキノシタは見た目だけでこの車を買ってしまったらしい。

走っているときは窓を開けているので暑さも気にならないが、
信号待ちや渋滞のノロノロ運転の時なんかは暑くて死にそうになる。

僕の夏休みの2日目、とにかく暑い。
これじゃエアコン無しの練習スタジオと変わらない。

暑さのせいで、あと何百qもこの道が続くような錯覚に陥ってしまう。

キノシタは信号が青に変わると同時にアクセルを強く踏んだ。
スポーツカーのような加速はないが風が入ってきて気持ちが良い。

壊れかけのカーステレオからはTHE JAMの1stアルバムが流れている。

あとどれくらいで着くのだろう?

昨日は飲み過ぎてキノシタの家に泊めてもらった。

新しい友達のような気もするし、前から知っていたのでずっと昔からの親友のようにも感じる。

こういうのも悪くないかな。

もしかすると賭に負けて良かったのかなぁ・・・・・

でも、この狭い車に男2人ってのはどうにもいただけない。

「なにニヤニヤしてんの?」

「してないよ!」

「もう少しで着くよ」

「そっか」

今日の朝、ネットで宿泊先を検索して5つにターゲットを絞った。
20くらいある宿泊先(実際はもっとあるんだろうけど)から、
料金・住所・『彼女』が選びそうなとこ等、どれも確実なものではないけども、
ターゲットを絞った方が効率が良い。

あとは宿泊先に行って訪ねても個人情報が云々とかってうるさいご時世に、
すんなりと宿泊者を教えてくれるかどうかが不安だ。

まぁ、どうにかなるだろう。