真夏にプリン

1章「彼女が死んだ」

(3)「回想」


メールを受信してから3時間後の午前9時、
僕はいつもの練習スタジオに向かうために電車に乗っている。

ちなみに服装はbalの黒い半袖シャツにリーバイスのブラックジーンズの全身黒。
洒落にならないくらいに暑い。

比較的この時間だと電車も空いていて、
すんなり座れたので僕はのんびりと窓から流れる景色を眺めている。

『彼女』の事を思い出そう。

名前は、キムラ・・・タケムラ・・・ヨシムラ・・・確か名字の最後に「村」が付くはずなんだけど思い出せない。
メールをくれた1歳下の男の名前は竹田だったと思うが『彼女』の名前を思い出せないくらいなので、
それも合っているのか自信がなくなってきた。

僕も1ヶ月前に入ったばかりだし、
友達同士で始めたバンドじゃないのでこんなものなのだろう。

バンドの編成は『彼女』=ボーカル・ギター
5歳くらい上の長髪の男=ギター
ギターの男と同じ歳(だと思う)の男=キーボード
1歳年下の男(僕より2日遅れて加入・今回のメールをくれた)=ベース
そして、僕=ドラムの5人。

僕とベースの男はメンバー募集の貼紙を楽器屋さんで見つけて入った。

そもそも始まりは『彼女』がきっかけらしいが、
メンバーチェンジを繰り返しているので元のメンバーは『彼女』しか残っていない。

かといってバンドの主導権を『彼女』が握っているというわけでもない。
(歌詞と曲は『彼女』が作っているが)

ジャンル分けが得意じゃないので上手く例えることができないが、
いわゆるベタな下北系のギターロックといったところなのだろうか。

それでも『彼女』の書く歌詞や曲は結構好きだ。

『彼女』の作ってくるモノを形にできるだけの能力や技術がこのバンドに欠けているので、
ベタなギターロックみたいになってしまっていると思うときもある。

僕自身、技術的にも全然未熟だし、
他のメンバーはどう思っているかはわからないが、
僕は音楽で生活していこうとは思っていない。

悪く言えば暇つぶしの手段の1つでしか過ぎない。

『彼女』はどう思っているのだろう?

バンドの結成者である『彼女』はたぶん年齢は僕より6、7歳上の25、26歳で、
(聞いたことないし、女の人に年齢を聞くのも・・・)
ほんとに独特の雰囲気を持っている。

すごく優しいような、すごく冷たいような目。
会話も少ないので何を考えているかもよくわからない。

でも人を惹きつける何かを『彼女』は持っている。
(それが何かが説明できないんだけど)

黒い髪、大きな瞳、細い手足、小さな耳、
メーカーのよくわからない赤いギター、
右手の指輪、x-girlのTシャツ、水色のi-pod、
甘い香りの煙草、エビアン、ポーターのトートバッグ、
コンバースのハイカット・・・・・それが僕が知っている『彼女』の全て。

電車の窓からプールに向かう子供達が見える。
日焼けした腕、水着とバスタオルを詰めてパンパンになっているカバン。

夏なんだな。

電車が駅に目的地の駅に着いて僕は慌てて降りた。