私はミルフィーユ

1章「女は用心深い!」


私の旦那は地方への出張が多い。

芸能事務所でマネージャーの仕事をしているといえば聞こえは良いが、
実際はあまり知らていない落語家のマネージャーだ。

まぁ私と2人の子供を養うのに最低限の給料は稼いでいるので、
特に不満はない、というか興味がないというのが本音だ。

さらには旦那にもあまり興味がない。

なんだか最近悩んでいるようにも見受けられるが、
旦那も平然を装っているように感じられるので私も気付かないふりをする。

もしも神様がいたとして「旦那の悩みをなぜ聞かないんだ?」と聞いてきたら、
私は「旦那が言いたくないのだからあえて聞かないのだ」と答えるだろう。

いつも私は最悪の事態に備えて、
言い訳にも似たなにかしらの「こたえ」を用意している。

旦那も私もお互いに何かを演じているということは同じかもしれないが、
そこが私と旦那の決定的に違うところだろう。

そして、もちろん私が「生活」に溶け込んだふりを何年もしていることも、
旦那以外の男と2年も付き合っていることも知られてはいないはずなので、
演じているなかでも私がその分優位に立っていると思う。

まぁ旦那の悩みと私の秘密を比べたら、
どう考えても私の方が罪深いんだけどもね・・・・・