『彼女が死んだ』 僕がこの6文字の短いメールを見たのは朝6時だった。 そして、この6文字のメールで僕の長くて短い夏休みは始まることになる。 僕がこのメールを受信したのは彼女の部屋のベットの中。 まだ隣で眠っている彼女とはまだ付き合って3ヶ月。 彼女はまだ眠っていたが、 僕はこのメールで目が覚めて慌てて自分の部屋に帰る支度をしている。 彼女は「どうしたの?」なんて寝ぼけた顔で僕に聞いてくるが、 僕もメールのまんま「彼女が死んだ」としか答えることもできないし、 メールに返信して詳しいことを聞くことさえ思いつかないでいる。 僕は混乱していた。 この『彼女』というのは付合っている彼女ではない。 正確には友達でさえもない。 僕が1ヶ月前に入ったばかりのバンドのヴォーカルの女の子で、 メールをくれたのはそのバンドに僕より2日遅れて入ったベースの1歳年下の男からだった。 週2回・3時間くらいの練習なので『彼女』と会ったのなんて数えられる程度。 『彼女』を含めた他のメンバーとは練習の後にどこか飲みに行ったりしたこともない。 それでも「死」に直面したことのない僕を混乱させるのに十分な材料だった。 僕は彼女の部屋を出て駅までの道を走っている。 とにかく自分の部屋に戻ろう。 それから・・・・・それからどうすればいいんだ? 朝6時だというのに日差しが強くて今日も暑くなりそうだ。 草むらに落ちているコーラの空缶。 僕の、僕らの夏休みが始まった。 |