家に帰ると食後には、もちろん待ち構えていたかのように 妻の笑顔とサーターアンダギーがでてきた。 人の気も知らないで妻は「美味しい?」なんて子供達に聞いている。 「上手にできたから油っぽくないし、 揚げているうちにちゃんと1ヶ所割れてチューリップみたいになってるでしょう」 妻は終いにはちょっとしたトリビアまで披露している。 人の気も知らないで・・・・・ そして僕は今一人、居間でサーターアンダギーを人差し指で転がしている。 「後でお酒を飲みながら食べるよ」と言って上手いことかわしたのだ。 目の前のテーブルにはサーターアンダギーと缶ビールが置かれている。 妻はというと疲れたのか子供達と先に寝ていて居間には 僕と天敵のサーターアンダギー。 僕は人差し指で転がしながら酔った頭で色々考えている。 いつから「退屈病」にかかってしまったんだろう? 別に僕の人生に悩みや不幸があるわけじゃない。 端から見たら幸せそのものであるはずなのになぜなんだ? 考えても考えても答えが出ない。 僕は何年か前の先生の言葉を思い出していた。 『吉田くん、穴のないドーナッツだってあるんだよ』 あの時先生はなぜ意味を教えてくれなかったんだろう? あれから何年も経ったのにまったく意味がわからない。 先生が言うからには絶対に意味があるはずなのだ。 結局、答えのでないまま僕は一口だけサーターアンダギーを食べて眠った。 僕はこのサーターアンダギーみたいに自分が不細工に思えて嫌になる。 |