僕は久しぶりにあったキャシーといろんな話をした。 共通の友達のこと、家族のこと、残り少ない学校生活のこと、将来のこと・・・。 「ヘンゼル、進路って決まった?」 「ううん、まだだよ。キャシーはどうなんだい?」 オレンジ色の夕日がキャシーを照らしている。 僕はオレンジ色に照らされているキャシーに吸い込まれそうになる。 「そのことなんだけど・・・」 キャシーは何だか言い辛そうにしている。 「決まったのかい?」 「実は・・・私ね、ずっと考えてたんだけど・・・踊りの勉強がしたいんだ。」 「いいじゃないか。キャシーはダンスが上手だし勉強するともっと上手くなるよ。」 「ただ、それで・・・ロプロに行こうと思っているの・・・」 「え・・・、本当かい?!」 ロプロとはプーランの首都・アポネにあるダンススクールだ。 ヘンゼルとキャシーの住んでいるカパスからアポネまで300q。 もちろん今のように飛行機も新幹線も無いし、携帯電話もパソコンも無い時代。 田舎町カパスの学生達のほとんどはそのまま町に残って就職していたのだ。 ヘンゼル自身も将来のことを決めていないものの、 ぼんやりとこの田舎町のカパスに残るものだと思っていた。 カパスの町から出るということは別れを意味していた。 僕は、僕は頷くだけでキャシーに上手く何も言ってあげられなかった。 泣かないようにするだけで精一杯だったんだよ。 |